1 概要

機能性表示食品の届け出を行うにあたり、有効性の科学的根拠として、臨床試験の結果もしくはシステマティック・レビュー (SR) が必要になります。SRとは、ある疑問に対して、一定の基準や方法論によって、網羅的に論文を収集していき、それらを使って総合的に判断する手法となっております。このSRによく用いられている統計手法としてメタアナリシスがあり、本稿では、メタアナリシスについてご紹介します。

2 メタアナリシス

メタアナリシスとは、過去に報告された複数の研究結果を統合するために使用される統計学的手法を指しています (図1)。メタアナリシスを行うにあたり、PRISMA声明に基づくことが求められており、用いられる論文は、的確な基準によって収集する必要があります。
 また、抽出したデータをそのまま平均することはできないため、結果を統合する際には、各研究の効果量を算出し、fixed effect model もしくは random‒effects model を用いて、効果量を統合します。そのため、メタアナリシスを行うにあたっては、統計学に関しての専門的な知識が必要になります。

2.1 効果量の統合について

上記で説明したように効果量の統合は、fixed effect modelとrandom effects modelに分
かれます。
fixed effect modelは母集団の推定値が一つの真値であると考えます。このため、効果量の信頼区間が狭い研究を用いて強い重み付けを行う必要があり、以下のように重みを算出します。

一方、random effect modelは、母集団の推定値にばらつきがあると考えます。このため、研究間のばらつきτを考慮して、下記のように重みを算出する必要があります。

重み付け後の統合値を算出する過程は、同じであり、両者の違いは、重み付けの方法のみとなります。重み付けの式を見てわかる通り、random effects modelは、fixed effect modelの重みに研究者間のばらつきを考慮したものなので、fixed effect modelよりも弱い重み付けとなります。このため、効果量の標準誤差は、fixed effect modelのほうが小さく、信頼区間の幅も狭くなり、治療効果を拡大解釈してしまう危険性があります。このことから、一般的には、random effect modelを用い効果量の統合を行います。

3 PRISMA声明について

PRISMA声明とは、システマティック・レビュー報告のためのガイドラインです。2009年に初版が開発され、今日では、新たにPRISMA2020が更新されています。PRISMA2020では、7項目のチェックリストと、報告例などが書かれている「解析と詳細」で構成されており、メタアナリシスに関しても記載されています。
以下、チェックリストに記載されているメタアナリシスに関しての文言になります。

研究の統合 13d 結果を統合するために使用した方法を記載し、その選択の根拠を示す。メタアナリシスを実行した場合は、モデル、統計学的異質性の存在と程度を特定する方法、および使用したソフトウェアパッケージを記載する。
統合結果 21 実施したすべての統計学的統合の結果を示す。メタアナリシスが行われた場合は、それぞれの要約した効果推定量とその精度(例: 信頼区間)と統計学的異質性の評価を示す。グループを比較する場合は、効果の方向性を記載する。

4 まとめ

今回は、メタアナリシスについてご紹介させていただきました。SRにメタアナリシスを利用する際は、統計に関する専門的な知識が必要なほか、PRISMA2020に基づくことが推奨されています。

5 参考文献

  • 上岡ら. 「PRISMA 2020声明: システマティック・レビュー報告のための更新版ガイドライン」の解説と日本語訳. 薬理と治療 2021; 49 (6): 831-842
  •  城下ら. メタアナリシスの統計解析手法. Jpn J Psychosom Med 2021; 61 (8): 694-700

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